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核分裂反応と原発の基本原理

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原子の基本用語

1)地球上に存在するすべての物質は原子によって構成されています。
2)原子は原子核とそれを取り巻く電子によって構成されています。下図はヘリウムの原子イメージ図です。

 
原子のイメージ
このようなイラストは見たことないと思いますが、私も同じですので、不適切なイラストかもしれません。
ただ、陽子や中性子がやり取りしているπ(パイ)中間子による結合エネルギーが核分裂で発生する熱エネルギーの大元であるため、あえて描いてみました。ヘリウム4原子の場合、陽子2個、中性子2個の計4個の組み合わせでπ中間子をやり取りしているため、合計6つのπ中間子が陽子や中性子の間を行き来していることになります。
なお、中間子は湯川秀樹博士が存在を予言し、ノーベル賞を受賞したものです。中間子は質量が電子と陽子(≒中性子)との中間であるとことから中間子と名づけられました。

3)原子核は陽子(ようし)と中性子(ちゅうせいし)で構成されています。例外は一番軽い水素原子で原子核は陽子1個でその周りを電子1個が周回しています。

4)陽子はプラスの電荷を持ち、中性子は名前の通り電荷を持たず電気的には中性です。原子核が陽子のプラス電荷の反発力でバラバラにならないのは、陽子と陽子、陽子と中性子、中性子と中性子の間でπ(パイ)中間子をやり取りし、それによって発生する結合力が、陽子同士のプラス電荷による反発力を上回っているためです。

5)原子は約118種類ありますが、原子の種類や性質は原子核を構成する陽子の数(それに対応した電子の数)で決まり、陽子の数を原子番号といいます。ウラン235の原子番号は92です。

6)原子核の陽子と中性子の数を足したものを質量数といい、ウラン235の235が質量数です。ということはウラン235の中性子の数は、質量数-原子番号=235-92=143個になります。

7)ウランのように陽子の数が92個と多くなると、陽子同士のプラス電荷の反発力を上回る結合力を確保するため中性子の数が陽子に比べて大きくなります。最も質量数の少ないウランでも、陽子92個に対して中性子は125個あります(ウラン217)。

8)天然のウランとしてはウラン235のほか、ウラン238、ウラン234もあります。いずれも原子番号92、つまり陽子の数は92個と同じですが中性子の数が異なります。中性子の数が異なる原子を同位体といい、放射線や熱を放出しながら、より安定した別の原子に移行する同位体を放射線同位体といいます。ウランはすべて放射線同位体です。

9)放射線同位体がより安定した別の原子に移行する現象を放射線崩壊(自然崩壊)といい、元の原子の量が半分になるまでに必要な期間を半減期といいます。
<半減期の例>
●ウラン235(原子番号92):7億400万年
●ウラン238(原子番号92):44億6800万年
●プルトニウム239(原子番号94):2万4000年
●カリホルニウム252(原子番号98):2.65年/原発などの中性子源に利用

10)半減期は原子核の安定性を示しています。同じウランでも半減期が大きく異なるのは同位体によって安定性が異なるためです。原子核の安定性は陽子や中性子の数やバランスによって決まります。たとえばヘリウム4(陽子2、中性子2)は安定していますが、ヘリウム6(陽子2、中性子4)だと半減期は0.8秒です。

11)ウラン235は核分裂しなければ自然崩壊して徐々に姿を変え最後は鉛207(安定同位体)に落ち着きます。ウラン235の半分の量が鉛207になるのが7億400万年ということです。

原子核の自然崩壊

前項で述べた通り、原子核は+電荷を持つ陽子と電荷を持たない中性子で構成されています。陽子や中性子間には中間子による結合力が働きますが、陽子間は+電荷同士であるため電磁気力による反発力が働きます。陽子と中性子のバランスによっては原子核が不安定となります。不安定な原子を同位体といい、同位体は不安定性を解消するため放射性崩壊という原子核の崩壊現象を起こして安定な構成の原子に変化します。なお、放射性崩壊に際しては放射線が放出されます。これが放射性物質が放射線を出す原因です。
原子核の放射性崩壊には次図のようにα崩壊、β崩壊、γ崩壊の3種類があります。

ウラン235の核分裂反応

以下、上記のイラストの番号で説明します。核分裂から連鎖反応や臨界までは人工的な反応です。

①ウラン235の半減期は約7億年で、原子核を単独で見た場合、ウラン238の半減期約44億年に比べると安定しているといえます(ウランはすべて放射線崩壊するため物理学の世界では不安定核といいます)。ウラン235単独でも自然に核分裂(自発核分裂)することもありますが、めったに起きないため、原子炉では自発核分裂しやすいカリホルニウム235を使って人工的に中性子を発生さ、ウラン235に吸収させます。

②ウラン235が1個の中性子を吸収するとウラン236となり、エネルギーが増大し、原子核は不安定になります。

③不安定になった原子核は安定するために一定の割合で核分裂反応を起こし、二つ(まれに三つ)の原子に分かれます。このとき、2~3個の中性子と膨大な熱、アルファ線(実態は陽子2個+中性子2=ヘリウムの原子核)などの放射線を余分なエネルギーとして放出します。1gのウラン235で石炭約3トン分のエネルギーを放出します。
核分裂で生成される物質には、イットリウム+ヨウ素、クリプトン+バリウム、ルビジウム+セシウムなど40種類以上の組み合わせがあり、どの組み合わせの物質に分裂するかは神のみぞ知る確率論の世界であり、人類が制御することはできません。

④核分裂で発生した2~3個の中性子をほかのウラン235が吸収し、核分裂を連続的に繰り返すようになることを連鎖反応といいます。連鎖反応が安定して持続する状態を臨界といいます。

ウラン燃料の構成

出典:日本原燃 http://www.jnfl.co.jp/ja/business/about/mox/summary/

上図に示す通り、天然ウランの中には核分裂しやすいウラン235は約0.7%しか含まれていません。これを3~5%に濃縮したのが原発のウラン燃料になります。さらに90%以上までウラン235を濃縮すると原爆の材料になります。
ウラン燃料を原子炉で使用すると図にある通り、次のような変化が起きます。
1)ウラン235は3~5%あったものが1%に減少
2)核分裂生成物が3~5%、プルトニウム1%が新たに生成
ウラン235の核分裂反応により熱エネルギーとイットリウム95やヨウ素139などの核分裂生成物が生まれます。核分裂で発生した中性子をウラン238が吸収してプルトニウムが生まれます。

ウラン燃料ペレット(模型)

原発で使用する燃料ペレットには約9gのウラン235が含まれています。馴染みのある単位で表すと1gのウラン235で、2,560兆×100万個の原子の数になります。核燃料として使用されるのはウラン235は、この20~30%ですが、それでも膨大な数のウラン235から下記のような割合で核分裂生成物が生まれます。ウラン235の半減期7億年に比べると、核分裂生成物の半減期が極めて短いことが分かります。これは核分裂生成物が激しく自然崩壊することを意味します。
自然崩壊によってアルファ線やベータ線といった放射線や放射線が物質に衝突して生じる崩壊熱が発生します。
使用済核燃料が大量の放射線を出し、また長期間にわたって冷却しなければならないのは、このためです。

ウラン235の主な核分裂生成物   
  生成物 収率 半減期
1 セシウム133 6.70% 安定
2 ヨウ素135 6.28% 6.57時間
3 ジルコニウム93 6.30% 153万年
4 セシウム137 6.19% 30.17年
5 テクネチウム99 6.05% 21.1万年
6 ストロンチウム89 4.73% 50.53日
7 ストロンチウム90 5.75% 28.9年
8 ヨウ素131 2.83% 8.02日
9 プロメチウム147 2.27% 2.62年
10 サマリウム149 1.09% 安定
11 ヨウ素129 0.54% 1570万年
12 キセノン133 6.70% 5.2日

プルトニウム239の生成

ウラン238からプルトニウム239が生成されます。そのプロセスは下記の通りです。中性子がウラン235に吸収されると核分裂を起こして熱エネルギーと核分裂生成物が発生しますが、中性子がウラン238に吸収されると幾つかのプロセスを経てプルトニウム239が生成されます。
生成されたプルトニウム239そのものも原子炉内で核分裂を起こし、熱エネルギーを放出します。原子炉内で発生する熱エネルギーのおおよそ2/3がウラン235、1/3がプルトニウム239によるものです。

プルトニウム239は天然にはごく微量にしか存在せず、原発のMOX燃料や核兵器で使用されているプルトニウムは人工的につくり出されたものです。ウラン235よりも核分裂しやすく、MOX燃料としてはフランスやドイツなどでは40年以上前から使用されています。日本では福井県のふげん原発が、世界最大のMOX燃料の実証実験用の重水炉として1978年に運転を開始、2003年に実験と運転を終了しています。後継炉が続かなかったのは、減速材に使用する重水がトリチウムに変化して管理が難しい、重水の製造コストが高く、原子炉の稼働率が低いため採算が取れない、などの理由があるとされています。

原発と原爆――毎日、原発1基で広島型原爆3個分の核分裂反応

核燃料内のウラン235や新たに生成されたプルトニウム239の核分裂の連鎖反応で発生する中性子をウラン238に吸収させたり、ホウ素やカドミウムなどの中性子吸収材で制御しながら持続的に熱を発生させ、お湯を沸かし、蒸気の力で発電機を回しているのが原発、ウラン235の濃度を高め、連鎖反応を瞬間的・爆発的に発生させ一気に大量の熱を放出する兵器が原爆ということになります。
原発の燃料になるのか、原爆の材料になるのかは上記で説明した通り、ウラン235の濃度によります。ただし、製造コストの面から、主要国の原爆はプルトニウム型が大半を占め、ウラン型はイランなど開発初期段階の国に限られています。

おおよそ出力100KWの原発1基で、毎日、広島型原爆3個分の核分裂反応を発生させているそうです。原発の熱効率は約30%とのことですので、毎日、原発1基で原爆1個分のエネルギーを電力に変換し、原爆2個分のエネルギーを温排水として海に排出したり、空気を温めたりしていることになります。原子炉そのものは確かに温室効果ガスを排出しませんが、いわば超巨大なヒーターとして直接、海水や大気を温めていることは間違いありません。敦賀湾など原発立地周辺の海洋の生態環境が大きく破壊されている状況を見る限り、原発が地球環境に優しいとはいえないことが分かります。

 

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